結婚不要社会 (朝日新書)

結婚不要社会 (朝日新書) の詳細

なかなか手厳しいタイトルです。筆者の山田昌弘さんは、中央大学教授で家族社会学の研究者ですが、これまでジャーナリスティックな感覚で多くの著作を世に問うてきた方です。センセーショナルなタイトルですが、これからの日本の未来図を明示した本なのかもしれません。「結婚困難社会」に突入しているのは、経済的な困窮度の高まりと同時に感じられている社会現象です。「未婚化は、結婚をめぐる意識は変わらないけれども、『経済・社会環境』が変わったがために生じた現象であり、経済の低成長という構造的要因なので将来的にも結婚できない人が増え続ける（28ｐ）」という筆者の主張は相当早い段階から唱えられていたようです。先見の明があります。今なら、それが納得できるわけですが、最初に唱えられた頃は、確かにそこまで世間の思いが至っていなかったのも事実です。110ｐに「非嫡出子割合の変化」のグラフがあり、近年2％を超えていました。「あえて未婚で産む」と指摘されている状況が到来していました。2％を超える非嫡出子というのはあまり知られていない状況ではないでしょうか。家族の在り方の多様化が進んだ結果だとも言えます。136ｐには筆者が回答者となった人生相談「割り切った結婚観の娘」が紹介されていました。世代での結婚観の違いが浮き彫りになっている相談例です。「お金は大事だから」という価値観と恋愛観には、我々にはどうしても受け入れられません。理解するのも難しいわけですが、そのような状況が生まれているのでしょう。155ｐに「実質賃金指数の推移の国際比較」のグラフがあり、日本のみ落ち続けています。賃金水準が低下し続けていれば、当然経済的な困窮度の割合も増すわけで、社会のあり方が結婚まで厳しい状況に追い込んでいるのが伝わってきます。同様に「結婚相手に求める年収と雇用形態」でも女性が相手に求める年収の高さと正規・非正規を意識する率の高さが浮かび上がっています。当然でしょうが、これも年々高くなっているのでしょう。ラストに、本書の元になったのは『出会いと結婚』に収められた論文「日本の結婚のゆくえ‐困難か、不要なのか」と書かれていました。常に日本の状況を読者に明確に提示し、より厳しい未来図を見せる手法に感心しながら読了しました。